冬の1等星とオリオン座の物語

冬の星空

2023年12月25日22時頃の南のさいたま市の星空


 2023年の12月25日の夜空には,月齢12.6のもう少しで真ん丸になる月と、-2.7等の木星が、冬の星々とコラボレーションしています。


 今日は、「冬の1等星」の探し方と、「オリオン座」の星物語をご紹介します。

 冬は空気が澄んで星がよく見えます。しかも冬の夜空は豪華です。 1等星という明るい恒星は全天に21個ありますが、北半球のこのあたりで見える1等星は15個。 冬の夜空には、なんとその約半分、7個の1等星があるのです。では、その7つの1等星を探してみましょう。

 冬の星探しはオリオン座探しから、そして、オリオン座探しは3つ並んだ2等星からです。
2等星がほぼ同じ間隔で3つ並んでます。これをオリオン座の三つ星と言います。 この3つの星で間違いないか、確かめてみましょう。等間隔で並ぶ3つの2等星を4つの明るい星が囲んでいれば、間違いなし、それがオリオン座です。 そして、三つ星を囲む4つの明るい星のうち、左上の星が1等星ベテルギウス。もう1つは右下の星、これが1等星リゲルです。

 オリオン座は右足で立って左足をあげ、右手で棍棒を振り上げ、左腕に打ち倒したライオンの毛皮を掛けた狩人の姿です。 オリオンは海の神ポセイドンの息子で、海の底を歩いても頭が波の上に出るという巨人で、ギリシア1の狩りの達人だったそうです。

 ベテルギウスはオリオンの右肩、リゲルは振り上げた左足のつま先です。三つ星はオリオンのベルト。さらにベルトから下がった小さな3つの星があり、 これを小三つ星と言います。小三つ星はオリオンがベルトに差した刀です。

 世界共通の星座は88ありますが1等星は21個だけです。ですから、1等星がない星座がたくさんあります。 なのに、オリオン座には1等星が2つもあるのです。 オリオン座には1等星が2つに2等星が5つもあって、冬の夜空で一番見つけやすい星座です。

 では次に、残る5つの1等星を探しましょう。
オリオン座の3つ星を東に延ばしていくと そこに、北半球で見える1番明るい恒星、おおいぬ座の1等星シリウスがあります。
その北、シリウスとベテルギウスとで三角形を作るところに、こいぬ座の1等星プロキオン。
  そのプロキオンの上に、二つ並んだ明るい星があります。これは、ふたご座のポルックスとカストル。 そのうちのポルックスが1等星。カストルは2等星です。
さらに、オリオン座の北にぎょしゃ座があって、その1等星はカペラ。
次に、オリオン座の北西に、おうし座の1等星アルデバラン。
これで1等星が7つです。・・・・

 星座絵ではおおいぬ座の1等星シリウスは、犬の口のあたりで輝いています。
こいぬ座は星2つだけの小さな星座。プロキオンは子犬の心臓あたり。 
次に、仲良し双子のふたご座は、左が弟のポルックス。右が兄さんのカストル。左のポルックスが1等星です。  ぎょしゃ座は、ヤギを抱いているおじいさん。そのヤギのところがカペラです。
おうし座の1等星、アルデバランはおうしの右目。

 このように、冬の7つの1等星は、オリオン座の1等星ベテルギウスのまわりを、 残る6つの1等星がぐるりと囲んでいて、この6つの1等星が作る六角形を、“冬のダイヤモンド”と言ったりします。 ダイヤモンドの中心でベテルギウスが赤く輝いています。

 ではここで“オリオンとプレアデスの7人姉妹の物語”をご紹介します。

 ギリシアの詩人ホメロスは、オリオンのことを、「背が高く、この上なく美しい」 と言っています。 つまりオリオンは、かっこよくてイケメン、しかもギリシア1の狩人だったので、ちょっとお調子にのっていました。そんなオリオンがある時森の中を通りかかると、美しい7人の乙女が歌ったり踊ったりしていました。彼女たちは、乙女の姿で神様にお仕えするニンフと呼ばれる妖精たちで、7人は月と狩りの女神アルテミスに仕える、プレアデスという名の美しい姉妹でした。
 ちょっとうぬぼれていい気になっていたオリオンは、この美しい姉妹が気に入って、しつこく追い回しました。 姉妹は逃げ疲れて、主人である女神アルテミスに助けを求めました。女神は、この7人姉妹を自分の衣の裾に 隠しました。で、オリオンは彼女たちを見つけることができなくなり、やがてしかたなく立ち去りました。
 オリオンが立ち去ると、女神の衣の裾から7羽の鳩が飛び立ち、鳩は空に登って星になりました。 その、7人姉妹の星がプレアデス星団です。プレアデスってギリシア語で「鳩たち」という意味だそうです。

 プレアデス星団、日本ではこれを「昴」と呼びます。双眼鏡もなかった千年もの昔、清少納言は「枕草子」に、 「星は昴」と書いています。つまり清少納言は、“夜空で最も素敵な星は、昴だ。”と言っているのです。

 ということは、昴は肉眼で見ることができる、ということです。ではどこに見えるのでしょう。

 プレアデス星団、すなわち昴は、おうしの右目のアルデバランを挟んで、オリオンの左肩の2等星、 女戦士ベラトリクスと呼ばれるこの2等星の、反対あたりにあります。つまり、おうしの肩先あたりです。 おうしの肩先辺りに 靄のようなものが見えます。これが昴、つまりプレアデス星団です。

 このもやのようなものをじっと見ていると、その中に、5つ6つと星が見えてきます。 人々はこれをプレアデスの姉妹だと考えたのです。でも実はこれ、望遠鏡で見ると、百数十もの若い星の集まり、星の団体、星団です。

では本日の星空案内はここまでです。
これからの季節、澄み渡る夜空に、冬の7つの1等星と昴を探してみてください。

著:Shiba

(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2023

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