「おとめ座の物語」

春の星空

2023年3月31日22時頃の南東のさいたま市の星空


 今回はおとめ座の1等星スピカの探し方と「おとめ座の物語」をご紹介します。

   春の1等星探しは北斗七星からです。この時期空高くに上がっていて見つけやすい北斗七星の、今回はその柄杓の柄からスタートです。
 北斗七星の柄杓の柄のカーブを、そのまま柄の先へと延ばしていった所に、うしかい座の1等星アークトゥルスがあります。 そしてそのカーブをさらに先へと延ばしていくと、そこに、おとめ座の1等星スピカがあります。スピカとは「麦の穂」という意味だそうです。 おとめ座の乙女が手に持つ、麦の穂の所でスピカは輝いています。この星、日本では真珠星などと呼ばれていました。


 さてこのおとめ座の乙女は、様々な女神とされていますが、本日はこれを、大神ゼウスの妹、デメテルだとする物語をご紹介します。
 女神デメテルは「大地の母」ともいわれ、大地からはえるものすべてが、この女神に支配されていました。そしてこのデメテルには、ペルセポネーというとても愛らしい一人娘がありました。

 ある日のこと、ペルセポネーが花を摘んでいると、香りが谷間に満ち満ちている、珍しい花を見つけました。思い切って引き抜いてみると、根本にぽっかりと黒い穴が開いて、なんとそこから冥界の王プルトーンが現れ、ペルセポネーをあの世へとさらっていってしまったのです。
 母デメテルは悲しみのあまり洞穴(ほらあな)に閉じこもってしまったので、大地に生えているすべてのものが枯れ、大地から生えるすべてのものが育たなくなってしまいました。このため、動物は食べ物がえられなくなって次々と命を落とし、人々も飢えに苦しむようになりました。

 困ったゼウスはプルトーンに、ペルセポネーを母の元に返すようにと言いつけました。しかし、ペルセポネーはすでに、冥土のザクロの実を4粒食べてしまっていたのです。このため彼女は、戻っても、1年のうち4ヶ月は、冥界で暮らさなければならなかったのです。
 それで毎年、ペルセポネーがそばにいなくなる4ヶ月の間は、デメテルは寂しさのあまり、洞穴にこもってしまうので、その間、地上は冬になる、ということです。

では、今回の星物語はここまでです。

著:Shiba


おとめ座イラスト:ユージ

(c)さいたまプラネタリウムクリエイト 2023

星の本棚に戻る